8月21日「心楽コラム」更新しました!

五十肩はなぜ起こる?炎症・血糖・コレステロールとの意外な関係

「ある日突然、肩が痛くなった」
「腕を上げようとしても、痛くて上がらない」
「夜になると肩がズキズキして眠れない」

40代、50代になると、こうした肩の悩みが急に増えてきます。いわゆる「四十肩」「五十肩」です。

でも、不思議だと思いませんか。「二十肩」「三十肩」という言葉は、ほとんど聞きません。なぜ40代を過ぎると、急に肩が痛くなるのでしょうか。単に「歳を取ったから」「肩を使いすぎたから」だけなのでしょうか。

じつは近年、世界中で五十肩の研究が進み、これまでよりずっと詳しいことが分かってきました。この記事では、今の医学で分かっている五十肩の仕組みと、病院で行われている治療、そして当院が五十肩をどう捉えて施術しているのかを、できるだけやさしい言葉でお伝えします。

結論だけ先に知りたい方へ(3行まとめ)

  • 五十肩は「歳のせい」だけでなく、血糖値・コレステロールなど体全体の代謝や慢性炎症とも関連することが最新研究で分かってきました。
  • 五十肩には「痛みが強い炎症期」と「痛みは軽いが硬い拘縮期」があり、時期によって正しい対応がまったく異なります。
  • 心楽では炎症が強い時期には無理に施術をせず、落ち着いてから関節包だけでなく肩まわりのファシアも含めて状態を確認します。
目次

そもそも「五十肩」とは何でしょう

五十肩は、医学的には「肩関節周囲炎」と呼ばれます。その中でも、肩が固まって動かなくなった状態は「凍結肩(とうけつかた)」と呼ばれます。名前のとおり、肩が凍ったように動かない状態です。

肩の関節は、骨がむき出しで動いているわけではありません。関節のまわりを「関節包」という、やわらかい袋のような組織が包んでいます。

新品のゴム手袋を想像してみてください。やわらかいゴムなら、引っ張ればよく伸びます。ところが、そのゴムが厚く硬くなって縮んでしまったらどうでしょう。動かそうとしても伸びません。五十肩では、これに似たことが肩の中で起きていると考えると分かりやすいです。

日本整形外科学会も、肩関節のまわりに炎症が起こり、関節包や滑液包が癒着すると、肩の動きがさらに悪くなると説明しています。

五十肩の正体は「炎症」と「線維化」

今の医学では、五十肩の中心にあるのは炎症と、そのあとに起こる組織の線維化だと考えられています。

まず、肩の関節包などで炎症が起こります。その炎症が続くと、傷を治そうとする細胞が働き始め、コラーゲンなどを作ります。ところが、それが必要以上に増えてしまうと、組織が厚く硬くなってしまいます。これを医学では「線維化」と呼びます。

難しく聞こえますが、炎症をくり返した組織が、だんだん硬く縮んでいくくらいに考えてください。

  • 炎症が起こる
  • → 肩まわりの組織が厚くなる
  • → 硬くなる
  • → 縮む
  • → 肩が動かなくなる

その結果、「腕が上がらない」「後ろに手が回らない」「服を着るのがつらい」「髪を洗えない」といった困りごとが出てきます。

なぜ40代・50代で増えるのか

血糖値やコレステロールとの関連が報告されています

ここが、最近の研究でとても興味深いところです。

2025年に発表された五十肩についてのシステマティックレビュー・メタ解析では、合計7,499人分のデータが解析されました。すると五十肩の人では、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー/血糖の長期的な状態を見る数値)が高い傾向にありました。さらにコレステロールも高い傾向が確認され、体内で炎症に関わる物質も多くなっていました。

研究者たちは、五十肩を単なる「肩だけの病気」と考えるのではなく、体全体の代謝や慢性的な炎症も関わっているのではないかと考え始めています。

かみくだいて言うと

「代謝異常」「慢性炎症」と言われても、ピンときませんよね。ものすごく簡単に言えば、若い頃に比べて、血糖値やコレステロールを良い状態に保ちにくくなってくるということです。

もちろん、血液そのものが泥水のように「汚れる」わけではありません。高血糖や脂質異常などが増えることで、体の中に炎症や組織の変化が起こりやすくなる、という意味です。これなら、若い人に五十肩が少なく、40代以降に増えてくることとも、つじつまが合います。

ただし現段階では、「高血糖やコレステロールが五十肩の直接の原因である」と証明されたわけではありません。あくまで、五十肩になりやすい体の環境をつくる一因ではないかと考えられている段階です。

糖尿病がある人は、五十肩になりやすい

糖尿病との関係は、さらに分かりやすいデータがあります。2026年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析(総計約35万人分)では、糖尿病がある人は、ない人と比べて五十肩になるオッズが3.69倍でした。

血糖コントロールがうまくいっていないこと、肥満、脂質異常、甲状腺の問題、喫煙などもリスク要因として挙げられています。高血糖が続くと、糖が体内のタンパク質と結びついてAGEsという物質が増え、コラーゲンなどの組織が硬くなりやすくなることも指摘されています。

つまり五十肩は、「50歳になったから肩が古くなった」という単純な話ではなさそうなのです。

【重要】五十肩には「痛い時期」と「固まる時期」があります

ここは、この記事でいちばんお伝えしたいことです。五十肩は、ずっと同じ状態ではありません。大きく分けて3つの時期があります。

時期主な状態
①炎症期炎症が強く、痛みが中心。夜間痛やじっとしていても痛むことがある
②拘縮期痛みは落ち着くが、肩の硬さ・動かしにくさが中心になる
③回復期少しずつ動きが戻ってくる

特に注意したいのが①の炎症期です。次のような状態は、まだ炎症が強い可能性があります。

  • 何もしていなくても肩がズキズキする
  • 夜、肩が痛くて目が覚める
  • 寝返りをうつだけで激しく痛む
  • 動かしたあとも痛みが残る
  • 硬いというより、とにかく痛くて動かせない

日本整形外科学会でも、痛みが強い急性期には三角巾などで安静を図り、消炎鎮痛剤の内服や注射などを行い、急性期を過ぎてから温熱療法や運動療法を行うとしています。日本理学療法学会連合のガイドラインでも、炎症期と拘縮期を分けて検討されています。

その痛み、本当に五十肩でしょうか

「肩が上がらない=すべて五十肩」ではありません。肩には、腱板断裂・石灰沈着性腱板炎・上腕二頭筋長頭腱炎・胸郭出口症候群など、五十肩と似た症状を出すものがあります。

日本整形外科学会も、レントゲン・MRI・超音波検査などでこれらを区別すると説明しています。とくに急に強い痛みが出た場合や、転倒・外傷のあとに腕が上がらなくなった場合は、まず整形外科で診てもらうことをおすすめします。

病院ではどんな治療をするのでしょう

炎症が強い時期には、消炎鎮痛剤・注射・安静などで、まず痛みを抑えます。炎症が落ち着いてくると、運動療法、関節可動域訓練、ストレッチ、理学療法士による徒手療法などが行われます。

それでも肩が非常に強く固まり、通常の方法では変化しにくい場合には、非観血的関節授動術(いわゆるサイレントマニピュレーション)が行われることがあります。神経ブロックなどで痛みを感じにくくしたうえで、医師が固くなった肩を動かして可動域を広げる治療です。さらに難しい場合は、関節鏡を使って硬くなった関節包を切開する手術が検討されることもあります。

「肩は動くようになったのに、また痛くなる」という報告

ここは誤解してほしくない部分です。サイレントマニピュレーションは、日本でも行われている医学的な治療で、痛みや可動域が改善したという研究もあります。「良くない治療だ」と言うつもりはまったくありません。

ただし、治療後にふたたび痛みが強くなる方がいることも、国内の研究で報告されています。

2021年の日本肩関節学会誌の研究では、24肩を追跡したところ、痛みの数値(VAS)は術前85mmから術後1か月には13mmまで大きく下がりました。ところが術後2か月では24mmへと有意に再燃していました。興味深いことに、その時点でも肩の可動域自体は良好に改善していたのです。

また2024年の同学会誌の研究では、術後2か月で痛みが再燃した20肩と、再燃しなかった22肩を比較しています。両群で年齢などの背景や可動域に差はなかった一方、再燃した方々は術前から痛みが強かったことが分かりました。

つまり、「肩は動くようになった。でも痛みはまた出てきた」という方が、たしかに存在するということです。

当院の考え:関節包の”外側”にあるファシア

ここから先は、医学的に証明されていることではなく、当院で実際に多くの肩に触れてきた経験から考えていることとしてお読みください。

医学では、五十肩について主に「関節包の炎症・線維化・拘縮」に注目します。一方で当院では、関節包だけでなく、そのまわりに広がっているファシア(筋膜)の状態も重要ではないかと考えています。

ファシアとは何でしょう

ファシアとは、筋肉・神経・血管・内臓など、体のさまざまな組織を包み、つないでいる結合組織です。イメージするなら、体の中に張りめぐらされた薄いボディースーツのようなもの。肩の周囲にも、肩関節・肩甲骨・胸・脇・背中・首をつなぐファシアがあります。

本来、このファシア同士はなめらかに滑ります。ところが何らかの原因で炎症が起き、その後うまく滑らなくなると、周辺の筋肉も自由に動きにくくなります。これを心楽では「ファシアの癒着」として捉えています。

こんな悪循環が起きているのではないか

  • ファシアの滑りが悪くなる
  • → 筋肉がスムーズに動かなくなる
  • → 筋肉が緊張して硬くなる
  • → 肩甲骨も動きにくくなる
  • → さらに動かしにくさや痛みが強くなる

これは現段階で医学的に確立された説明ではありません。あくまで、当院が実際の施術経験から持っている考え方です。

筋膜リリースと五十肩の研究も出てきています

当院の考え方と関連して、2026年に興味深いシステマティックレビューが発表されました。五十肩に対する筋膜リリース(Myofascial Release)について、それまでの研究をまとめたものです。

その結果、通常の理学療法などに筋膜リリースを加えた場合、痛み・日常生活での不自由さ・肩の動く範囲(とくに腕を横から上げる動きと、外側へ回す動き)が改善する傾向が報告されました。

ただし、この研究では筋膜リリース単独の研究はまだ少なく、多くは一般的な理学療法や運動療法に追加した形です。したがって「筋膜リリースだけで五十肩が治ることが証明された」という意味ではありません。それでも、五十肩に対してファシアへアプローチするという考え方の研究が少しずつ増えてきていることは、とても興味深いと感じています。

だから心楽は「痛い肩を無理やり動かす」ことを目的にしません

肩が上がらないと、「とにかく肩を上げなければ」と思ってしまいます。しかし心楽では、動かない肩そのものを力任せに動かすという考え方はしていません。

まず、どこで動きが止まっているのかを一つずつ確認します。肩の前なのか。脇なのか。肩甲骨のまわりなのか。胸なのか。背中なのか。そして、動きをじゃましていると考えられるファシアに対して、できるだけ痛みを出さないように慎重に施術していきます。

「バキ、バキッ」と腕力で無理に動かすのではなく、ファシアの癒着を剥がし、動きをじゃましているものを一つずつ減らし、結果として肩が動きやすい状態を目指すという考え方です。

「もう五十肩だから仕方がない」と諦める前に

次のような方は、肩関節だけでなく、そのまわりのファシアまで含めて体の動きを確認してみる価値があると考えています。

  • 半年以上リハビリを続けているが、まだ腕が上がらない
  • 注射で痛みは減ったが、肩が固まったまま
  • 夜間痛はなくなった。でも腕が上まで上がらない
  • 後ろに手が回らず、服を着るのが大変
  • 病院で「あとは様子を見ましょう」と言われたままになっている
先に医療機関へ相談していただきたい場合
  • 夜も眠れないほどズキズキする
  • 何もしていなくても強く痛む
  • 急に激痛が出た
  • 転倒や外傷のあとから腕が上がらない

このような場合は、まず整形外科での受診をおすすめします。心楽でも、炎症が強いと判断した場合は無理に施術を行いません。

病院で変化がなかったからといって、諦める必要はありません

病院と整体は、どちらが正しい・間違っているという話ではありません。病院には、画像検査・薬・注射・手術という、病院にしかできない大切な役割があります。

一方で心楽は、実際に体に触れながら、どこの組織が動きをじゃましているのかを一つずつ探していくという視点を大切にしています。医療機関での治療を受けても肩の痛みや動かしにくさが残っている方に、「もう一つ違う見方もありますよ」とお伝えするのが、当院の役割だと考えています。

「自分の肩は、そもそも施術できる状態なのか」というご相談だけでも構いません。現在の状態を確認したうえで、まだ炎症が強いと考えられる場合には、そのことも正直にお伝えします。無理に施術をおすすめすることはありません。

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よくあるご質問

Q. 四十肩と五十肩は違うものですか?

A. 基本的に同じものを指しています。発症する年代によって呼び名が変わっているだけで、医学的にはどちらも「肩関節周囲炎」と呼ばれます。

Q. 五十肩は放っておいても自然に治りますか?

A. 自然に軽くなることもありますが、日本整形外科学会は、放置すると日常生活が不自由になるだけでなく、関節が癒着して動かなくなることもあると説明しています。長引いている場合は、一度状態を確認することをおすすめします。

Q. 夜間痛がある時期に整体を受けてもいいですか?

A. 心楽では、炎症が強いと判断した場合は施術を行いません。まず医療機関で状態を確認していただくようお伝えしています。

Q. 痛い施術ですか?

A. 「バキッ」と鳴らしたり、力任せに動かしたりはしません。できるだけ痛みを出さないように、動きをじゃましている部分を一つずつ確認しながら進めていきます。

Q. 血糖値が高めなのですが、関係ありますか?

A. 研究では関連が報告されていますが、「血糖値が高い=必ず五十肩になる」という意味ではありません。血糖値そのものについては、かかりつけの医療機関にご相談ください。

参考文献

  1. 日本整形外科学会「五十肩(肩関節周囲炎)」
    https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/frozen_shoulder.html
    肩関節周囲の炎症、関節包・滑液包の癒着による拘縮、腱板断裂などとの鑑別、急性期の安静と薬物療法、急性期後の温熱・運動療法について説明されています。
  2. 日本理学療法学会連合「肩関節機能障害理学療法ガイドライン(肩関節周囲炎)」
    https://www.jspt.or.jp/guideline/2nd/shoulder/
    炎症期と拘縮期を分け、それぞれに適した運動療法・徒手療法などが検討されています。炎症期では、痛みを伴わない運動と痛みを伴う運動のどちらが適切かという点も評価対象になっています。
  3. Hamed-Hamed D, Rodríguez-Pérez C, Pruimboom L, et al. Influence of the metabolic and inflammatory profile in patients with frozen shoulder – systematic review and meta-analysis. BMC Musculoskelet Disord. 2025;26:475.
    DOI: 10.1186/s12891-025-08706-9
    7,499人を含む解析で、五十肩患者ではHbA1cとコレステロールが最も関連の強い代謝指標であり、IL-1β・TNF-αも炎症・線維化と関連していました。
  4. Hernigou P, Scarlat MM. The diabetic shoulder: association between diabetes mellitus and adhesive capsulitis – a systematic review and meta-analysis. Int Orthop. 2026;50(4):839-851.
    DOI: 10.1007/s00264-026-06793-4
    糖尿病がある人は五十肩になるオッズが3.69倍(95%CI 2.99–4.56)。血糖コントロール不良・肥満・脂質異常なども関連要因として挙げられています。
  5. 「凍結肩に対する非観血的関節授動術後の疼痛再燃因子の検討」肩関節 2024;48(1):143.
    DOI: 10.11296/katakansetsu.48.143J-STAGE
    術後2か月で痛みが再燃した20肩と再燃しなかった22肩を比較。再燃した群は術前から痛みが有意に強かったことが示されました。
  6. 「凍結肩に対する非観血的関節授動術後のリハビリテーションの注意点」肩関節 2021;45(2):382.
    DOI: 10.11296/katakansetsu.45.382J-STAGE
    24肩を追跡。VASは術前85mmから術後1か月13mmまで改善しましたが、術後2か月には24mmへ有意に再燃。一方で可動域は良好に改善していました。
  7. Myofascial Release Techniques as an Adjunct Treatment in Individuals With Frozen Shoulder: A Systematic Review. Health Sci Rep. 2026.
    DOI: 10.1002/hsr2.72590
    通常の理学療法に筋膜リリースを加えた場合、痛み・機能・可動域(とくに外転・外旋)の改善が報告されています。ただし単独介入の研究は少なく、今後の検証が必要とされています。
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