8月21日「心楽コラム」更新しました!

腱板断裂と診断されたのに痛み止めだけ…その肩の痛み、我慢するしかない?

「肩が痛くて腕が上がらない」
「夜になるとズキズキして、何度も目が覚める」
「洗濯物を干す、服を着る、それだけでもつらい」

病院で検査を受けて「腱板が断裂しています」と言われたとき、多くの方が同じことを考えます。切れているなら、もう手術しかないのだろうか。腕は元どおり動かなくなるのだろうか、と。

ところが、腱板断裂について今分かっていることを一つずつ見ていくと、「切れている=痛い」「切れている=動かない」という単純な話ではないことが見えてきます。この記事では、現在の研究で分かっていることと、当院が腱板断裂の方をどう考えて施術しているのかを、できるだけやさしい言葉でお伝えします。

結論だけ先に知りたい方へ(3行まとめ)

  • 腱板が切れていても痛みを感じていない人は珍しくありません。日本の住民調査では、断裂が見つかった人のおよそ3人に2人が無症状でした。
  • 断裂の大きさと痛みの強さは一致しません。断裂そのものより、周囲に起きている炎症が痛みに関わっている可能性が指摘されています。
  • 当院では切れた腱をつなぐことはできません。動きを邪魔しているファシアの癒着に丁寧にアプローチし、夜間痛や日常生活のつらさが軽くなることを目指しています。
目次

「このまま我慢するしかないんでしょうか」

以前、肩の痛みと夜間痛に悩む高齢の女性が当院に来られました。1か月以上たっても痛みが引かず、腕も十分に上がらない。洗濯物を干すといった家事にも困るようになり、病院を受診されたそうです。

そこで腱板断裂を指摘されました。ただ手術を勧められることはなく、患者さんのお話では「年齢的に治りません。痛み止めを出しておきます」と説明されたとのことでした。

当院でお話を伺っていると、その方は涙ぐみながら、こう言われました。

「このままずっと我慢するしかないんでしょうか」

そのとき私がまず考えたのは、せめて夜、肩の痛みで目を覚まさずに眠れるようにして差し上げたいということでした。

肩の状態を知るために、いくつかの動作チェックを行いました。腕がまったく上がらない状態ではなく、ある程度はご自分の力で動かせていました。ただ夜間痛があることから、炎症がまだ残っている可能性を考え、刺激で痛みをぶり返させないよう、時間をかけて慎重にファシアへアプローチしました。

施術後、その方は「痛みがずいぶん楽になった」と話され、腕もご自分で150度ほどまで挙げられるようになりました。

この方はご高齢で、仕事で重い物を持ち上げる必要もありません。「洗濯物を干す」「着替える」「顔を洗う」「夜ぐっすり眠る」という日常生活に困らないことが目標でしたので、通院を続ける必要はないと判断し、初回で終了となりました。

もちろん当院ではMRIなどで断裂の大きさを確認したわけではありませんので、実際にどの程度の状態だったのかは分かりません。施術によって切れた腱そのものが修復されたという意味でもありません。

それでも、「腱板断裂があること」と「肩の痛みや動きが改善しないこと」は、必ずしも同じではない。そして、高齢だから、腱板断裂だからといって、最初から日常生活の改善まで諦める必要はないのではないか。あらためてそう考えさせられた出来事でした。

※施術後の変化には個人差があります。すべての方に同じ変化が起こることをお約束するものではありません。

じつは、この一見不思議に見える現象は、現在の研究を調べていくと理由が少しずつ見えてきます。ここから順番に説明していきます。

そもそも「腱板」とは何でしょうか

肩の関節は、股関節のように骨が深くはまり込んだ関節ではありません。肩甲骨にある浅い受け皿の上に、上腕骨の丸い骨が乗っているような構造です。小さなお皿の上にボールが乗っていると考えると分かりやすいと思います。

これだけでは不安定なので、周囲の筋肉と腱が協力して上腕骨を支えています。とくに重要なのが、棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょっかきん)、小円筋(しょうえんきん)、肩甲下筋(けんこうかきん)という4つの筋肉です。この4つの腱が上腕骨を包み込むようについているため、まとめて「腱板(けんばん)」と呼ばれます。

腱板の断裂には2種類あります。腱の厚みの一部だけが傷んでいる部分断裂と、腱の表から裏まで裂けている全層断裂です。全層断裂は「完全断裂」と説明されることもあります。

原因にも違いがあります。転倒して手をついた、重い物を急に持ち上げた、肩を脱臼したといった出来事がきっかけになる外傷性断裂と、中高年以降に、はっきりしたケガの記憶がないまま長年の使用や加齢で少しずつ傷んでいく変性断裂です。「特にケガをしていないのに検査で腱板断裂と言われた」という方が多いのは、後者があるからです。

腱板が切れているのに痛くない人が、たくさんいます

ここからが腱板断裂の不思議なところです。

日本のある村で行われた住民健診で、664人の肩を超音波で調べた研究があります。その結果、22.1%の人に全層断裂(腱が完全に裂けている状態)が見つかりました

驚くのはここからです。断裂が見つかった人のうち、症状があった人は34.7%。残りの65.3%、つまりおよそ3人に2人は、肩に症状がありませんでした。

年代別にみると、20〜40代では0%だったのに対し、50代で10.7%、70代で26.5%、80代では36.6%と、年齢とともに増えていきます。この調査に参加した方の平均年齢は約70歳ですので、日本人全体の数字というより「中高年の集団を調べたらこうだった」と読むのが正確です。

これはとても大切な意味を持っています。検査で「腱板断裂があります」と分かったことと、「今感じている肩の痛みは、その断裂がすべての原因です」ということは、必ずしも同じではないのです。

断裂が大きいほど痛い、とも限りません

普通に考えれば、少し切れている人より大きく切れている人の方が痛いはずです。ところが、実際の研究ではそうなっていません。

症状のある非外傷性の全層腱板断裂の患者さん393人を調べた研究では、切れた腱の数、断裂の大きさ、腱の縮み具合、筋肉の萎縮といった構造的な重症度と、患者さんが感じている痛みの強さとの間に、明確な関連がみられませんでした

つまり「たくさん切れているから、たくさん痛い」とは限らない。反対に、小さな断裂でも非常に強い痛みを感じる方がいます。では、その痛みはどこから来ているのでしょうか。

痛みには「断裂」だけでなく、周囲の炎症も関係しています

近年の研究では、腱板断裂の痛みには、切れた腱そのものだけでなく、その周囲に起きている炎症が関係していることが分かってきました。

腱板のすぐ近くには「肩峰下滑液包(けんぽうかかつえきほう)」という小さな袋があります。腱や筋肉が骨と擦れずに滑らかに動くための、クッションのような組織です。腱板が切れている肩では、この滑液包や関節の内側の膜に炎症が起きることがあります。

日本の研究チームが、手術を受けた131肩を関節鏡で調べた報告があります。腱の隙間(腱板疎部)の滑膜炎の強さは手術前の痛みと関連していた一方で、断裂の大きさや数は痛みと関連しませんでした

また、MRIで肩まわりの血流を調べた54人の研究では、肩峰下滑液包の血流が増えている患者さんほど、動作時の痛みや夜間痛が強い傾向が報告されています。

こう考えると、腑に落ちるのではないでしょうか。断裂が大きくても炎症が少なければ痛くない人がいて、それほど大きな断裂でなくても周囲の炎症が強ければ夜も眠れないほど痛む人がいる。

もちろん、肩の痛みが炎症だけですべて説明できるわけではありません。筋肉の働き、関節の硬さ、肩甲骨の動き、神経のはたらきなど、さまざまな要因が関係すると考えられています。

なぜ完全断裂していても腕が上がるのでしょうか

「筋が切れているのに、どうして腕が上がるの?」というのも、とても自然な疑問だと思います。

答えはシンプルで、肩を動かしているのは腱板だけではないからです。三角筋、肩甲骨まわりの筋肉、残っている他の腱板筋など、たくさんの筋肉が協力して腕を動かしています。

4人で重い物を持ち上げている場面を想像してみてください。そのうち1人が力を出せなくなっても、残りの3人がうまく力を合わせれば、ある程度は持ち上げられます。人間の肩でも同じことが起こります。身体には、傷んだ部分を他の筋肉が補う代償能力が備わっているのです。

反対に、この力のバランスが大きく崩れると、神経が麻痺していないのに自力では腕を上げられない「偽性麻痺(ぎせいまひ)」という状態になることもあります。いずれにしても、完全断裂=腕が上がらない、とは限りません。

五十肩とはどう違うのでしょうか

★前回のコラムでは四十肩・五十肩について解説しました。腱板断裂と五十肩は、「腕が上がらない」「夜に痛い」「服を着るのがつらい」といった似た症状が出るため、ご自身で見分けるのは難しいと思います。

一つの目安として、次のような違いがあります。

腱板断裂典型的な五十肩
自分の力で腕を上げる上げにくいことがある上げにくい
人に動かしてもらう比較的動くことがあるやはり動きにくい
主に起きていること腱の断裂+周囲の炎症など関節包が硬くなる(拘縮)など

ただし実際には「腱板断裂+五十肩」「腱板断裂+滑液包炎」というように、複数が同時に起こることもあります。自己判断ではなく、まず整形外科で状態を確認することが大切です。

レントゲンだけでは腱板断裂は確認できません

腱板は骨ではなく、筋肉の先にある柔らかい組織です。そのため普通のレントゲンでは、切れている部分そのものを直接見ることはできません。レントゲンで確認できるのは、骨折、関節の変形、石灰などです。

腱板断裂を詳しく確認するにはMRIや超音波(エコー)が役立ちます。2025年8月に改訂された米国整形外科学会(AAOS)の腱板損傷診療ガイドラインでも、MRI・CT・超音波は診察やレントゲンと組み合わせることで腱板断裂の発見に有用であると、強い推奨として示されています。

「腱板断裂=すぐ手術」ではありません

ここも非常に大切なポイントです。腱板断裂が見つかったからといって、すべての方が手術になるわけではありません。

2025年のAAOSガイドラインでは、症状のある小〜中程度の全層腱板断裂について、理学療法でも患者さんが感じる痛みや機能は改善することが、高いレベルのエビデンスとして示されています。

また、症状のある非外傷性の全層腱板断裂の患者さんを10年間追跡した大規模研究では、70%以上が手術に至らず経過したことが報告されています。理学療法で得られた改善は、その後も長く保たれていました。

つまり、完全断裂していても手術をせずに痛みや機能が改善する人がいること自体は、医学的にも確認されているのです。

ただし「痛みが消えた=切れた腱がつながった」ではありません

ここは覚えておいていただきたいところです。

保存療法で痛みが減り、腕が上がるようになり、夜眠れるようになったとしても、切れていた腱そのものが元どおりつながったとは限りません。

AAOSの2025年ガイドラインでも、理学療法で症状や機能は改善する一方、5〜10年という長い目でみると、断裂が大きくなったり、筋肉が萎縮したり、脂肪変性が進んだりする患者さんがいることが示されています。

3cm以下の全層断裂の患者さん103人を、手術群と理学療法群に分けて15年間追跡したノルウェーの研究でも、両方のグループで症状は改善しましたが、長期的には腱を修復した手術群の方が良い成績でした。修復されなかった断裂は、平均16.2mmから31.6mmへと広がっていました。

ですから、「痛くなくなったから放っておいて大丈夫」とも、「断裂しているから全員手術」とも、単純には言えません。年齢、断裂の大きさ、外傷性かどうか、筋力、仕事や生活への影響などを含めて、整形外科で判断してもらうことが大切です。

まず病院で「手術が必要な状態か」を確認してください

当院にも腱板断裂と診断された方からご相談をいただきます。そのとき最初に大切だと考えているのは、まず病院できちんと状態を確認することです。

整体より整形外科を優先していただきたい場合

  • 転倒や事故の直後から、急に腕が上がらなくなった
  • それまで普通に使えていた腕に、突然強い筋力低下が出た
  • 肩を脱臼した後から動かなくなった
  • 広範囲の断裂を指摘された

手術が必要な状態であれば、手術で腱を修復するという選択肢があります。これは整体にはできないことです。

一方で、「手術は必要ありません。まず保存療法で様子をみましょう」と言われたものの、こういう状態が続いている方がいらっしゃいます。

痛み止めを飲んでいるけれど、まだ痛い。夜になるとズキズキして眠れない。腕が上がらず、日常生活に困っている。

ここから先が、当院がお手伝いできる可能性のある部分です。

当院の考え方

ここまでは研究や診療ガイドラインをもとにした説明でした。ここからは、当院で腱板断裂と診断された方を施術してきた経験と、心楽の考え方をお話しします。

当院では「腱板が断裂している=その断裂だけが今の痛みの原因」とは考えていません。すでに見てきたように、断裂があるのに痛くない人がいて、断裂の大きさと痛みの強さが一致せず、完全断裂したままでも保存療法で改善する人がいることが分かっているからです。

では、切れた腱以外のどこを診るのか。当院がとくに重視しているのがファシアです。

ファシアが「くっついて動きにくくなる」と考えると分かりやすい

ファシアは、単に筋肉を包んでいる膜のことではありません。筋肉、神経、血管など身体のさまざまな組織を包み、それぞれがスムーズに動くことにも関わっている組織です。

健康な状態では、筋肉とファシアは互いに滑りながら動きます。ところが炎症、ケガ、長期間の筋緊張、同じ姿勢や動作の繰り返しなどが続くと、組織同士の滑りが悪くなることがあります。心楽ではこの状態を、患者さんに分かりやすくファシアが癒着している」とお伝えしています。

この「滑りの悪さ」を客観的に測ろうとする試みも始まっています。2024年には、超音波を使って大胸筋と小胸筋の間の滑り具合を測定した報告があり、慢性的な肩の痛みがある側では、痛みのない側に比べて滑りが小さくなっていました。ただしこれは1名を対象とした症例報告ですので、現時点では「そういう測り方ができるようになってきた」という段階です。

ファシアへのアプローチで肩の痛みや可動域が改善した研究もあります

2024年に発表された無作為化比較試験では、肩峰下疼痛症候群の患者さん50人を「運動療法だけのグループ」と「運動療法にマイオファシアルリリース(ファシアへの手技)を加えたグループ」に分けて比較しました。

週5回、4週間続けた結果、ファシアへの手技を加えたグループの方が、肩の外転・外旋の可動域、動作時の痛み、肩の機能に、より大きな改善がみられました。ただしこの研究では3cmを超える腱板断裂のある方は対象から除かれています。

また2017年には、脳卒中後で腱板の腱が完全に失われていた69歳の女性に対し、ファシアへの手技を1回行ったところ、10段階で最大だった痛みと肩の機能に改善がみられたという症例報告も発表されています。1例の報告ですので効果を証明するものではありませんが、腱板が断裂している状態でも、ファシアへのアプローチで症状が変化しうることを考えるうえで、興味深い報告だと思います。

心楽が目指すのは「切れた腱を治すこと」ではありません

はっきりお伝えしておきます。当院の施術で、完全断裂した腱そのものを縫い合わせることはできません。そこは手術の役割です。

しかし腱板が断裂していても、痛みの強さや腕の動きは、断裂の程度だけでは決まりません。当院では、病院で腱板断裂と診断されて保存療法となり、その後も肩の痛みや動かしにくさで困っている方に施術を行い、「夜間痛が軽くなった」「腕が動かしやすくなった」「日常生活が楽になった」というお声をいただくことが数多くあります。

そこで当院が診るのは、MRIに写った断裂だけではありません。肩の周囲に加えて、肩甲骨のまわり、背中、胸郭なども確認しながら、どこにファシアの癒着があり、どこが肩の動きを邪魔しているのかを探していきます。そして、その癒着を一つずつ丁寧に解放していきます。

炎症が強い時期には、無理に施術しません

腱板断裂でもっともつらい症状の一つが夜間痛です。「寝ようとするとズキズキする」「寝返りのたびに目が覚める」「痛い方を下にして眠れない」という方がいらっしゃいます。

炎症が非常に強いこの時期に、痛い場所を強く揉んだり、無理に肩を動かしたりすると、かえって症状が悪くなる場合があります。ですから当院では、強い炎症がある時期には、無理に深い施術を行いません。

病院から鎮痛薬・抗炎症薬が処方されている場合は、医師の指示に従って使用しながら、まず強い炎症と痛みを落ち着かせることも大切です。そして炎症が落ち着いてきた段階から、身体の状態を確認しつつ施術を行っていきます。

初回の目標は「まず普通に眠れること」

当院では、最初から「腕を180度まで上げましょう」ということだけを目標にはしません。優先したいのは、患者さんが今いちばん困っていることです。

とくに夜間痛がある方では、「まず夜ぐっすり眠れる状態を目指す」ことを初回の大きな目標にします。睡眠中に何度も痛みで目が覚めていては、身体も十分に休まりません。

顔を洗う。歯を磨く。服を着る。髪を洗う。洗濯物を干す。食事をする。普段なら何も考えずにしている動作が、肩を痛めると急につらくなります。ですから初回は、まず日常生活にできるだけ困らない状態にすることを大切にしています。

2回目以降は、初回の施術後に夜間痛や日常生活の痛みがどう変化したかを確認しながら、さらに深い場所のファシアへ少しずつアプローチしていきます。

心楽の施術は、痛いところを強く押したり、無理やり腕を上げたり、関節を力任せに動かしたりする方法ではありません。ファシアの状態を手で確認しながら、動きを邪魔している癒着を一つずつ解放していく、という考え方です。深い場所に原因がある場合でも、強い力をかければ良いというものではありません。

よくあるご質問

腱板断裂と診断されました。整体を受けても大丈夫ですか?

まず整形外科で、手術が必要な状態かどうかを確認してください。急に腕が上がらなくなった、強い筋力低下がある、広範囲の断裂を指摘されたという場合は、整形外科での評価が優先です。「手術は不要、保存療法で」と言われた方については、状態を確認しながらご相談に応じています。

整体で切れた腱はつながりますか?

つながりません。断裂した腱を修復できるのは手術だけです。心楽が目指しているのは、痛みや動きを邪魔しているファシアの癒着を解放し、夜間痛や日常生活のつらさが軽くなることです。

何回くらい通う必要がありますか?

状態や生活の目標によって異なります。当院は通い続けていただくことを前提にしていません。日常生活に困らない状態になった時点で終了とご案内することもあります。

夜、痛くて眠れません。すぐに施術を受けた方がいいですか?

炎症が非常に強い時期は、無理に深い施術をするとかえって悪化することがあります。当院では、痛みを増やさないように慎重に施術を行います。処方薬がある場合は、医師の指示に従ってご使用ください。

「腱板断裂だから仕方ない」と諦める前に

腱板断裂という診断名だけを聞くと、「切れているなら、もう仕方がない」と思ってしまう方がいます。

しかし現在の医学では、腱板断裂があっても痛くない人がたくさんいること、断裂の大きさと痛みの強さが必ずしも一致しないこと、完全断裂していても保存療法で痛みや機能が改善する人がいることが分かっています。

検査で腱板断裂が見つかったことと、今感じているすべての痛みや動きづらさがその断裂だけで決まっていることは、同じではありません。

まず整形外科で検査を受け、手術が必要な状態なのか、保存療法で経過をみる状態なのかを、きちんと判断してもらってください。

そのうえで、「手術は必要ないと言われた。でも痛くて夜眠れない」「痛み止めを処方されたけれど、この先どうすればいいのか分からない」「腕が上がらなくて、毎日の生活に困っている」という状態が続いているのであれば、まだできることがあるかもしれません。

夜、肩の痛みを気にせず眠りたい。普通に顔を洗いたい。服を着たい。洗濯物を干したい。腕を上げて髪を洗いたい。

患者さんにとって大切なのは、毎日の生活が楽になることだと当院は考えています。腱板断裂と診断され、手術ではなく保存療法となったものの、痛みや動かしにくさで困っている方は、一度ご相談ください。

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参考文献

  1. American Academy of Orthopaedic Surgeons. Management of Rotator Cuff Injuries Evidence-Based Clinical Practice Guideline. 2025年8月18日公開.
    https://www.aaos.org/rccpg2025
    2019年版を改訂した米国整形外科学会のガイドラインです。症状のある小〜中程度の全層断裂では理学療法・手術のどちらでも痛みと機能が改善すること、一方で長期の保存療法では断裂の拡大・筋萎縮・脂肪変性が進みうることが示されています。MRI・CT・超音波が診断の補助として強く推奨されています。
  2. Minagawa H, et al. Prevalence of symptomatic and asymptomatic rotator cuff tears in the general population: From mass-screening in one village. J Orthop. 2013;10(1):8-12.
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3768248/
    日本の一村で664人(平均年齢69.5歳)の肩を超音波で調べた研究です。22.1%に全層断裂が認められ、そのうち症状のある人は34.7%、無症状の人は65.3%でした。
  3. Dunn WR, et al. Symptoms of pain do not correlate with rotator cuff tear severity. J Bone Joint Surg Am. 2014;96(10):793-800.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24875019/
    症候性・非外傷性の全層腱板断裂患者393人の研究です。断裂した腱の数、断裂の大きさ、腱の退縮、筋萎縮などの構造的重症度と痛みの強さに、明確な関連はみられませんでした。
  4. Nagase Y, et al. Preoperative pain associated with rotator cuff tears correlates with synovitis severity in the rotator interval. JSES Int. 2026;(2025年10月オンライン公開).
    10.1016/j.jseint.2025.09.013
    関節鏡手術を受けた131肩の日本の研究です。腱板疎部の滑膜炎の程度は術前の痛みと有意に関連した一方、断裂の大きさや数は関連しませんでした。
  5. Morimoto T, et al. Impact of hemodynamics in individual shoulder structures on pain intensity in patients with rotator cuff tear. J Shoulder Elbow Surg. 2025.
    https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1058274625004288
    症状のある全層腱板断裂の患者54人をダイナミックMRIで調べた研究です。肩峰下滑液包の血流増加が動作時痛・夜間痛と関連していました。
  6. MOON Shoulder Group. The Predictors of Surgery for Symptomatic, Atraumatic Full-Thickness Rotator Cuff Tears Change Over Time: Ten-Year Outcomes. J Bone Joint Surg Am. 2024;106(17):1563-1572.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38980920/
    症状のある非外傷性の全層腱板断裂を10年追跡した前向き研究です。理学療法は70%以上の患者に有効で、12週間で得られた改善は10年間低下しませんでした。
  7. Moosmayer S, et al. Fifteen-Year Results of a Comparative Analysis of Tendon Repair Versus Physiotherapy for Small-to-Medium-Sized Rotator Cuff Tears. J Bone Joint Surg Am. 2024;106(19):1785-1796.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39197154/
    3cm以下の全層断裂103人を手術群と理学療法群に無作為に分け、15年追跡した研究です。長期的には腱修復群の方が良好で、修復されなかった断裂は平均16.2mmから31.6mmに拡大しました。
  8. Li Y, et al. Health-related outcomes with supervised exercise and myofascial release versus only supervised exercise in subacromial pain syndrome. BMC Sports Sci Med Rehabil. 2024;16:171.
    10.1186/s13102-024-00960-z
    肩峰下疼痛症候群50人を対象とし、週5回・4週間実施した無作為化比較試験です。運動療法にマイオファシアルリリースを加えた群で、肩関節の外転・外旋可動域、活動時痛、肩機能により大きな改善がみられました。なお3cmを超える腱板断裂は除外基準となっています。
  9. Zhao L, et al. Measuring myofascial shear strain in chronic shoulder pain with ultrasound shear strain imaging: a case report. BMC Musculoskelet Disord. 2024;25:412.
    10.1186/s12891-024-07514-x
    超音波で大胸筋と小胸筋の間の滑り具合(シアストレイン)を測定した症例報告(1例)です。慢性的な肩の痛みがある側は0.40、ない側は1.09と、痛みのある側で滑りが小さいという結果でした。
  10. Pintucci M, et al. Successful treatment of rotator cuff tear using Fascial Manipulation® in a stroke patient. J Bodyw Mov Ther. 2017;21(3):653-657.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28750980/
    脳卒中後で腱板の腱の遠位部が完全に失われていた69歳女性に、ファシアへの手技を1回行った症例報告です。施術後に痛みと肩機能の改善が報告されています。1例の報告であり、効果を証明するものではありません。
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