8月21日「心楽コラム」更新しました!

膝が痛いのに、なぜ膝以外を施術するの?|膝を揉まない整体という選択肢

「膝が痛い」とき、多くの方はまず膝そのものを何とかしようとします。湿布を貼る、サポーターを巻く、病院でヒアルロン酸の注射を受ける、水が溜まっていれば抜いてもらう。痛い場所が膝なのですから、ごく自然な発想です。

ところが——いろいろ試したのに、なかなか変わらない。抜いたはずの水がまた溜まる。注射の効いている期間がだんだん短くなってきた。そんな経験をされている方も、少なくないと思います。

そういう方に、一度だけ持ってみてほしい視点があります。それが「膝以外から、膝をみる」という考え方です。

この記事では、膝の痛みとレントゲン画像の関係、身体をつないでいるファシア(筋膜)というネットワーク、そして当院が、痛い膝をいきなり強く揉んだり曲げたりしない理由を、できるだけやさしい言葉でご説明します。

結論だけ先に知りたい方へ(3行まとめ)

  • レントゲンの骨変形の程度と、痛みの強さは必ずしも一致しないことが研究で分かっています。
  • 膝には、太もも・ふくらはぎ・足首・股関節などから引っ張る力がかかっています。
  • 心楽では、膝そのものへの負担をできるだけ抑え、離れた場所のファシア(筋膜)から確認していきます。
目次

「膝が痛い=膝だけが原因」とは限りません

もちろん、膝関節そのものに大きな問題があり、医療的な治療や手術が必要になる場合もあります。だからこそ、まずは整形外科などで検査を受け、骨や関節にどの程度の変化が起きているのかを確認することがとても大切です。

そのうえで、知っておいていただきたいことがあります。実は最新研究では、レントゲンで確認される骨の変形と、実際に感じている痛みの強さは、必ずしも一致しないことが分かっています[1]

レントゲン上では変形性膝関節症の変化がかなり進んで見えるのに、それほど膝を痛がっていない方がいます。反対に、画像では大きな変化がないのに、強い痛みで階段の上り下りがつらいという方もいます。

つまり、「画像に写っている変形=そのまま痛みの強さ」ではないということです。「軟骨がすり減っていますね」と言われたからといって、それだけで今の痛みのすべてが説明できるとは限らないのです。

心楽が、膝痛の方で必ず確認する場所

心楽では、膝が痛い方でも、膝だけを見ることはありません。実際に確認していくのは、次のような場所です。

  • 太ももの前側・後ろ側・内側・外側
  • ふくらはぎ、すね
  • 足首、足の裏
  • 股関節のまわり
  • お腹の奥
  • 肋骨のまわりや内側

「膝が痛いのに、どうして足の裏やお腹、肋骨まで触るの?」と不思議に思われるかもしれません。ここで関係してくるのが、ファシア(筋膜)です。

ファシア(筋膜)は、身体をつなぐネットワーク

ファシア(筋膜)というと、「筋肉を包んでいる膜」をイメージする方が多いと思います。けれど、ここでいうファシアは筋肉だけの話ではありません。

筋肉のまわりはもちろん、骨のまわり、神経や血管のまわり、関節の周囲にも結合組織が広がっています。それらは身体の中でバラバラに存在しているのではなく、互いにつながり、影響し合いながら、私たちの動きを支えています。

言いかえれば、ファシア(筋膜)全身に張りめぐらされた立体的なネットワークです。だから、足の裏の状態が太ももに、お腹の奥の状態が股関節に影響することも十分に考えられます。心楽が、この「身体のつながり」を何より大切にしているのはそのためです。

ファシア(筋膜)が滑らなくなると、何が起きるのか

本来、皮膚・ファシア・筋肉・神経・血管・骨の周囲といった組織は、それぞれがある程度滑り合いながら身体を動かしています。この「滑り」を、専門的には滑走性と呼びます。

ところが何らかの理由で組織同士の滑りが悪くなり癒着した状態になると、そのまわりの組織まで動きにくくなることがあります。心楽では、このファシア(筋膜)の癒着をていねいにゆるめ、組織同士の滑走性を取り戻していくことを大切にしています。

施術をしていると、骨の周囲と筋肉との滑りを回復させるようにアプローチした直後、それまで硬く張っていた筋肉がふっと柔らかくなり、動きが変わるケースを経験します。身体は思っている以上に「離れた場所」とつながっている、というのが日々の実感です。

硬くなった筋肉が、膝を引っ張っていることがあります

太ももの前後・内側・外側、ふくらはぎ、足首まわりなどの滑りが悪くなり、その周囲の筋肉が緊張した状態が続くと、膝関節にかかる力の方向にも影響する可能性があります。

イメージしてみてください。膝の上下には、たくさんの筋肉や腱がつながっています。それらがいろいろな方向から強く引っ張り続ければ、膝はいつも同じ方向へ引かれたり、ねじれるような力を受け続けたりすることになります。

膝は、いわば上と下から引っ張られている真ん中の関節です。真ん中だけをどうにかしようとしても、上下から引く力が変わらなければ、同じことの繰り返しになりやすい。だから心楽では、膝だけでなく太もも、ふくらはぎ、足首、股関節、お腹の奥、肋骨周辺までを含めて施術していきます。

「膝から離れた場所をゆるめる」という考え方は、研究も始まっています

これは整体の世界だけで語られている話ではありません。

2025年には、変形性膝関節症の患者さんを対象に、身体の深い部分をつなぐ「Deep Front Line(ディープ・フロント・ライン)」と呼ばれる筋・ファシアのつながりへのリリース(解放)を行ったランダム化比較試験が発表されています[2]

この研究では、45〜60歳の変形性膝関節症の患者さん32人を2つのグループに分け、Deep Front Lineへの筋膜リリースと、別の運動連鎖を利用した軟部組織へのアプローチを比較しました。その結果、Deep Front Lineにアプローチしたグループでも、膝の痛みや日常生活での機能、膝の動き方などに変化がみられています。

この研究から得られるのは、「膝が痛いから膝だけを診る」のではなく、身体のつながりや、膝から離れた軟部組織までが研究の対象になっているという事実です。

本来は「点」ではなく「面」で体重を受けたい

ここからは、当院が膝を施術するときに大切にしている考え方です。

膝関節には、立つ・歩く・階段を上るといった日常の動作のたびに、繰り返し体重がかかります。その力が関節の一部分だけに偏らず、できるだけ広く分散されることは、膝への負担を考えるうえでとても重要です。

ところが太ももやふくらはぎが強く緊張し、膝にねじれるような力が加わっていると、荷重が特定の場所に偏る可能性があります。同じ体重でも、狭い一点で受け止めるのと、面で受け止めるのとでは、膝にとっての意味がまるで違います。

そこで心楽では、膝を無理に押したり動かしたりする前に、膝を引っ張っている可能性のある周囲や離れた場所のファシア(筋膜)の癒着を確認します。滑走性が回復し、まわりの筋肉の緊張がやわらぐことで、膝にかかっていた偏った力が少なくなれば、痛みが楽になる可能性があります。

「膝に水が溜まる」のは、水そのものが原因なのでしょうか

「膝に水が溜まっていますね」と言われた経験のある方も多いと思います。実際、たくさんの水が溜まって腫れている場合には、痛みや動かしにくさと関係することがあります。

一方で、研究をまとめてみると、膝の炎症と痛みの関係はそれほど単純ではありません[4]。滑膜炎(関節の内側を覆う膜の炎症)については痛みとの関連が報告されていますが、関節液、いわゆる「膝の水」の量と痛みについては、研究によって結果が一致していないのです。

つまり、「水があるから、それだけが原因で痛い」と考えるより、「関節の中で何らかの変化が起きていて、その結果として水が増えている場合がある」と捉えたほうが、実際の膝の状態に近い可能性があります。

水を抜く処置が必要になる場合はありますし、それで楽になる方もいらっしゃいます。心楽は、水を抜く医療行為を否定するものではまったくありません。そのうえで大切にしているのは、「なぜ、この膝にこれほど負担が集中しているのだろう?」という一段深いところまで、身体全体から確認していくことです。

だから心楽は、痛い膝をいきなり強く触りません

膝が痛い方ほど、こう思われるはずです。

「整体で膝をグイグイ押されたら、もっと痛くなるんじゃないか」
「曲げられたり、ひねられたりするのが怖い」

その不安は、当然のものだと思います。痛いところをさらに刺激されるのは、誰だって怖い。

心楽では、痛みの強い膝をいきなり強く揉んだり、無理に曲げ伸ばししたりすることは一切しません。まず確認するのは、太ももの前後・内側・外側、ふくらはぎ、足首、股関節、お腹の奥、肋骨周辺です。そのうえで、膝に影響している可能性のあるファシア(筋膜)の癒着や滑走性をみながら、膝そのものへの負担をできるだけ抑えて施術を進めていきます。痛い膝にさらに強い刺激を加えるのではなく、膝から離れた場所を使いながら負担を抑えて施術できること。これが、心楽の膝への施術のいちばん大きな特徴です。

「軟骨がすり減っているから仕方ない」と諦める前に

病院で「軟骨がすり減っています」「変形性膝関節症ですね」と言われると、「もう元には戻らないんだ」「手術しかないのかな」と、気持ちが沈んでしまう方も多いと思います。

もちろん、変形がかなり進んでいたり、日常生活に大きな支障が出ていたりして、手術が必要になるケースもあります。その判断は、整形外科などの医療機関でしっかり診てもらうことが大前提です。

ただ、繰り返しになりますが、画像に写る変形だけで痛みの強さがすべて決まるわけではありません

病院で「今すぐ手術ではなく、しばらく様子を見ましょう」と言われた方。手術を検討しているけれど、それまでの毎日を少しでも楽に過ごしたい方。そうした方には、膝だけではなく、身体全体から膝への負担を見直すという選択肢もあります。

膝だけを、責めないでください

膝が痛いと、どうしても痛い膝ばかりが気になります。「この膝さえ良くなれば」と思ってしまう。

でも、身体は膝だけで動いているわけではありません。太ももの前、後ろ、内側、外側。ふくらはぎ。足首や足の裏。股関節。お腹の奥。肋骨のまわり。一見、膝とは関係なさそうな場所まで、身体はぜんぶつながっています。

「膝をいろいろやってきたけれど、なかなか変わらない」——そんなときは、一度「膝以外から膝を見る」という視点を持ってみてもよいかもしれません。

心楽では、痛い場所だけを見るのではなく、「なぜ、そこに負担が集まっているのか?」を身体全体から一緒に探していきます。膝を触られるのが怖い方、これ以上痛くならないか心配な方も、まずはご相談ください。

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よくあるご質問

Q. 膝が痛いのに、なぜ膝以外を施術するのですか?

膝は、太ももやふくらはぎ、股関節などから上下に引っ張られている関節だからです。その引っ張る力が偏ったままだと、膝だけを触っても同じ状態に戻りやすくなります。心楽では、ファシア(筋膜)のつながりをたどって、膝に負担をかけている場所を確認していきます。

Q. 膝を強く押されたり、ボキボキされたりしませんか?

いいえ。心楽ではボキボキ関節を鳴らす施術は行いませんし、痛みの強い膝をいきなりグリグリ強く揉むこともしません。膝から離れた場所を中心に、膝そのものへの負担を抑えながら進めていきます。

Q. 病院で変形性膝関節症と言われました。整体を受けても意味がありますか?

まずは医療機関の診断と治療方針を優先してください。そのうえで、画像上の変形と痛みの強さは必ずしも一致しないことが研究で分かっています。膝まわりの緊張や身体の使い方といった、画像に写らない部分を確認する選択肢はあります。

Q. 何回くらい通う必要がありますか?

心楽では回数券やコースの販売はしておらず、必要以上の通院もおすすめしていません。お身体の状態を確認したうえで、その都度ご相談させていただきます。

Q. 膝の水を抜いた直後でも受けられますか?

処置の直後は、まず主治医の指示に従ってください。時期や状態によって判断が変わりますので、ご予約の際にお伝えいただければ、無理のない範囲でご相談させていただきます。


参考にした研究・論文

[1]レントゲンの変形と膝の痛みは、必ずしも一致しない

Bedson J, Croft PR. The discordance between clinical and radiographic knee osteoarthritis: a systematic search and summary of the literature. BMC Musculoskeletal Disorders. 2008;9:116.

膝の痛みと、レントゲンで確認される変形性膝関節症との関係を調べた研究をまとめた論文です。レントゲン上で変形性膝関節症が確認された人のうち、実際に膝の痛みがあった割合は、研究によって15%〜81%と大きく異なりました。逆に、膝が痛い人のすべてにレントゲン上の変形が見つかるわけでもありませんでした。研究者らは、膝のレントゲンだけを単独で患者さんの症状評価に使うべきではない、と結論づけています。

URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18764949/


[2]Deep Front Lineへの筋膜リリースを変形性膝関節症で調べたランダム化比較試験

Punjani A, Kage V, Patil A, Gurudut P, Welling A. Deep Front Line Myofascial Release Versus Novel Soft Tissue Kinetic Chain Activation Technique (K-CAT) on Pain, Radiological Patellar Position and Dynamic Knee Valgus in Knee Osteoarthritis: A Randomized Clinical Trial. International Journal of Therapeutic Massage & Bodywork. 2025;18(1):5-19.

45〜60歳の変形性膝関節症患者32人を対象にしたランダム化比較試験です。Deep Front Lineへの筋膜リリースを受けるグループと、K-CATという運動連鎖を利用した軟部組織へのアプローチを受けるグループを比較しました。両グループとも、通常の物理療法や運動療法を併用しています。2週間の介入後、両グループで痛み、膝の機能、動的膝外反などに改善がみられましたが、2つの方法を直接比較すると、多くの評価項目で明確な優劣はありませんでした。

この研究は「Deep Front Lineをリリースすれば変形性膝関節症が治る」と証明したものではありません。一方で、膝だけではなく、身体の深部をつなぐ軟部組織の連鎖を治療対象として研究している点が、たいへん興味深い研究です。

URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40092708/
DOI:10.3822/ijtmb.v18i1.1101


[3]変形性膝関節症に対する筋膜リリース研究をまとめたシステマティックレビュー

Farshchi F, Farshchi N, Abdi Hamzeh Kalayi R. The Role of Myofascial Release Techniques as an Adjunct to Other Therapies in Knee Osteoarthritis: A Systematic Review. Health Science Reports. 2025.

変形性膝関節症に対する筋膜リリースについて、789件の文献から選ばれた12研究をまとめたシステマティックレビューです。筋膜リリースを通常の理学療法や運動療法などと組み合わせることで、痛み、身体機能、膝の可動域などに良い結果がみられた研究がありました。

ただし、多くの研究で他の治療も同時に行われているため、筋膜リリース単独の効果を切り分けることは難しく、他の徒手療法より常に優れているとは確認されていません。そのため研究者らも、筋膜リリースを万能の治療法ではなく、運動などと組み合わせる補助的なアプローチとして位置づけています。

URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41292575/
DOI:10.1002/hsr2.71507


[4]膝の炎症・関節液と痛みとの関係を調べたシステマティックレビュー

Dainese P, Wyngaert KV, De Mits S, Wittoek R, Van Ginckel A, Calders P. Association between knee inflammation and knee pain in patients with knee osteoarthritis: a systematic review. Osteoarthritis and Cartilage. 2022;30(4):516-534.

変形性膝関節症の患者さんを対象に、滑膜炎、関節液(膝の水)、ベーカー嚢腫、炎症物質などと膝の痛みとの関係を調べた37研究をまとめた論文です。

滑膜炎については、膝の痛みとの関連を支持する中程度のエビデンスがありました。一方で、関節液、いわゆる「膝の水」と痛みとの関連については、研究結果が一致していませんでした。つまり「水がある=それだけが膝の痛みの原因」と単純には言えず、炎症を含めた関節全体の状態を見る必要があることを示唆しています。

URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34968719/
DOI:10.1016/j.joca.2021.12.003

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